プレッシャーを与えない男

本日スマホのバッテリー交換に行った際、修理を担当した女性の方がまだ慣れていないのか恐ろしいくらい緊張していた。
最初に受付した男性からの引継ぎも上の空、全て重複して聞いてきた。こっちが聞かれたことに対して答えてもきちんと伝わっていないし、ちぐはぐの会話だ。店員同士の会話もきちんとは聞こえてはいないが、明らかにズレている感じがわかる。
僕のスマホを手に取り、作業している手元が震えまくっているではないか!もはやアル中レベルのプルプル具合だ!

これはいかにプレッシャーを与えないかが鍵となると感じた。作業工程や誓約書が書かれているipadを見せられ説明を受けるが、タップも震えすぎていて画面がせわしなく変わる、酔いそうだ。
チェック項目も高橋名人くらいの連打でチェック入れているのでチェックしたのが次々と解除されていく。もはやその女性は目も合わせれない所まできている、なんとかせねば。

「30分くらいで作業が終わりますがいかがなさいますか?」、うん逃げよう。いや逃げてあげるべきだ。本当は持参した本を読む予定だったが、目の前で待たれたら彼女はどうなる、緊張のピークを過ぎてしまい救急車を呼ぶ羽目になるかもしれん。これはまずい。僕が怒って倒れさせたとなってしまう。店のオープンの時間も迫っている。取り調べはごめんだ。スマホ直しに行っただけで人を病院送りにしたったなんて武勇伝はいらない。そのビルを離れて近くの本屋に逃げ込んだ。

40分後戻った。まだ出来ていない。プレッシャーを与えないように本を読んでおこう。いかに待っていないか、いかに時間に余裕があるかをかもし出そう。今日この日僕は日本で一番プレッシャーを与えない男であらねば。最終チェックが済み、分解されていたスマホを閉じる工程に移った。
ゴールはすぐそこだ。「・・あっ!」と聞きたくない声が聴こえた。他の店員が寄ってくる、助言を受けたり色々している様子だが、もはや僕は耳をミュートにした、聴こえない、そして見ない。頭の中で「そういやこのビル、“ミーナ”やったな」と悪魔の関西弁が聴こえる。もはや僕は何と闘っているのだ。
そして考えるのをやめた。どれくらい経ったのだろうか、やっと終わり、愛想良く感謝の言葉を述べ、Bダッシュで逃げるようにミーナを後にした。

僕この日、日本で一番プレッシャーを与えない男だったのだろうか。