ひゃくえむ。

「チ。」の魚豊先生がチ。の前に描いた作品。
麒麟の川島さんをして、ひゃくえむの後半には「人生の全ての答えがある」と言わしめたほどの人生訓がある。

哲学的であり、誰しもが思う「なぜ?何のために?」の答えが描かれている。もはや単純な100m走の話ではない。天才とは凡人とは、才能とは努力とは、栄光とは挫折とは、生きる意味とは、何かをする目的とはなど、日常で誰しもが抱える大いなる疑問を100m10秒という世界で問うている。

小学校で出会った2人が、一度離れ、それぞれの陸上生活を送り、社会人時代になり、回りまわって最後は日本陸上100m決勝という舞台で相まみえるというシンプルなストーリーだが、聡明な作者の各キャラクターのセリフが素晴らしい。

こんなドラマに満ちた作品を上下巻で読めるとは、本当に無駄が無い。チ。も8巻で終わらせるくらいダラダラ続けない作者の心意気がまた良い。ラストもどうなったかを伝えない絶妙な展開で締められており、その余韻に浸れる感じが好きだわ。