とてつもない数学 後編

「同じ誕生日の人がいる確率」
40人のクラスに同じ誕生日の人がいる確率は約89%と意外に高い!

「算術、音楽、幾何学、天文学」
この4科目は、プラトンが、哲学的問答を学ぶための準備として、16歳までに特に訓練する必要があると考えたものである。この4科目に共通するのが数学的要素である。算術はもちろん、幾何学は図形(数と量)を研究することで論理的思考法を確立する上で必須である。

そして一見関係ないと思える音楽ですが、ピタゴラスたちは、美し協和音の中に潜む数の神秘に気づき「万物は数である」と説いた。ピタゴラス以後のギリシャでは、宇宙の根本原理は「ムジカ」であり、その調和は「ハルモニア」であると考えるようになった。ミュージックとハーモニーの語源である。実は、中世に至るまで、音楽は娯楽というより、秩序や調和の象徴として捉えられていた。だからこそ音楽を学ぶことは、宇宙の原理、言い換えれば神の言葉を理解する上でも欠かすことができなかったのだろう。
ガリレオも「宇宙は数学の言葉で書かれている」と言っている。

「ガウディとカテナリー曲線」
数学は建築の分野でも多大に取り入れられている。ガウディの建築群でよく使われているのが、カテナリーという曲線。懸垂曲線といわれ、放物線とは違う曲線である。サグラダファミリアでもデザインに取り入れている。ガウディは「美しい形は構造的に安定している。構造は自然から学ばなければならない」と言う。よって設計の多くを机上の計算ではなく、ひもや砂袋、おもりなどを使い実験や模型で設計していった。

「3種類の嘘」
“世の中には3種類の嘘がある。普通の嘘と真っ赤な嘘と、統計だ”という言葉がある。統計は確かにいつも正しいとは限らないしデータに偏りがあることも多い。しかしただ数字という強力な説得力のせいで、間違った統計が淘汰されることなく独り歩きしてしまうケースがある。しかし「数学なんて何の役に立つの?」という問いに対する1つの答えが“統計”であることは代え難い事実。

「円周率」
円周率は無理数だ、無理数は永遠に続く。2019年3月14日(円周率の日)。アメリカのGoogle社は、日本出身の岩尾エマはるかさんが、円周率を小数点以下31兆4000億桁まで計算することに成功したと発表した。2016年の記録から約9兆桁も更新するという凄い記録である。

円周率を3.14にしてしまうと、失敗する国家的プロジェクトもある。日本の惑星探査機「はやぶさ」は、計画の途中で地球との通信が途絶えてしまったものの、関係者の不断の努力により地球に帰還できた奇跡がある。あの時、軌道計算における円周率の値は、小数点以下15桁の値が使われた。JAXAによると、もし円周率を3.14として計算していたら、最大で約15万㎞も軌道がずれてしまい、たとえ通信が復活しても、はやぶさは地球に還れなかったはずなのだ。

最後に、数学というものが端的に表現されていた言葉を。「数学の持つ、合理性と簡潔さと美しさはどこにでも発見することができる。シンプルであること、簡潔であることが普遍的な美しさに通じる。そして数学的でありたいと願う心は、美しくありたいと願う心にとてもよく似ている。」