お客様から「好きなワインはなんですか？」とよく聞かれます。私は「特にないですねぇ」と答えます。
「やっぱり好きなワインを置いてるんですか？」ともよく言われます。「それはないですねぇ」と私は答えます。すると驚かれます！
私は自分の好みのワインだけを置いているソムリエを認めていません。自分の趣向だけで選ぶソムリエがいるなら、それは趣味であり自宅でせいと思います。
私は“ソムリエ＝指揮者”だと捉えています。「指揮者に好きな曲はありますか？」と質問して、これですって答えが返ってくるでしょうか・・。指揮者は自分の好きな曲だけ演奏するわけではありません。様々な作曲家の、様々な曲を網羅して解釈する必要があり、指揮するときは、その曲を最高のものにして聴衆に届けることが求められます。
ソムリエも同じです。多くの飲み手がいる以上、自分の好みだけで納得させることなどできるわけがないのです。作曲家＝産地、曲＝ブドウ、生産者＝ソリスト、と捉えることができるでしょう。
同じ産地のワインばっかに偏っている方は、そのターゲットしか納得させれないのです。
ワインは、芸術であり教養です。先入観や偏りは持つべきではないのです。