吐露

お客様によく「正月の格付け番組のワインて実際やったらどっちかわかります?」とか言われるが、私は「わからないと思います」と答えています。はたまた「ソムリエさんやしどんなワイン飲んでも銘柄とかわかるんですか?」とか聞かれることもあります。私は「全然わからないですね」と答えています。こうした答えを言うと皆さん意外な返答なのか一瞬戸惑われます。
私はワインの銘柄あてに費やす練習時間は無駄な時間だと思っています。「それでもソムリエか」と思われるかもしれませんが、そんなことは重要視していません。そんなものは取るに足らない小事です。

これと似た話があり、昔、三国志の一方の主人公である魏の皇帝の曹操の前に、一人の仙人が紹介されました。「この仙人は、障子を閉めたままで、道を通り過ぎる馬の色を当てることが出来る能力があります」という説明に、現実的な曹操は、「そんな能力は要らない。障子を開ければ分かることではないか。日ごろそんな訓練している人間は有能とは思えない」と、追い返すのでした。
まさにこのような思いですね。

皆様が思っているソムリエのイメージて実際にはほぼ役立たないものばっかりなんです。そんな能力よりも、お客様に興味を持って、どうすれば喜んでもらえるかを考えれる力の方が大事なのです。
「1000本のワインを知っているより、1000人のお客様を知っている方が価値がある」てことです。

私は、ワインジャーナリストでもテイスターでもコンクール出場者でもありません。ワインが生まれた故郷に思いをはせることはあっても、特定したいという感情はありません。ブラインドでワインを当ててお客様に何か良いことあるのでしょうか。当てれば自分が気持ちいい気分になるだけですね。
私はサービスマンです。店に来ていただいたお客様に非日常の空間で心地良い時間を提供できるかどうかが大切なのです。ワインに詳しかったとて、それが出来ていなければ無駄なわけです。お客様からの「楽しかった~」を目指しているんです。

来られた方はおわかりですが、私はワインを詳しく語ったり、蘊蓄に時間を割いたりしません。主役はお客様であり、時間であり、空間なのです。私が好きなお店もまさにこのような感じで接してくれています。聞いてもいないのに語り出す自己満足野郎がいてる店には二度と行きませんしね。