一冊本を挙げろと言われたら迷わずに選ぶのがこちら。引っ越しのたびに減っていく所持品や本。そんな中でもたった一冊手元から離れなかったのがこの遠藤周作の「沈黙」。
それなりにいろんな本を読んできたが、生涯で魂が奮えた唯一の本。マーティン・スコセッシ監督が構想に何十年とかけて映画化もした作品。もちろん映画も見に行ったが、3時間以内にこの世界観を伝えることは難しい。
この「沈黙」は司祭であるロドリゴの心の声こそが見る者の魂に訴えかけるものなので、原作の完成度が至高の域に達している為、映画であっても超えることはできない。
内容:禁教下、弾圧と残忍な拷問が続く日本。そんな中、師事していたかつてのフェレイラ神父が棄教したとの一報がポルトガルに届く。信仰心の塊のような尊敬すべき神父が迫害などに屈するはずがないと、教え子のロドリゴ司祭は真実を知るべく志願し、キリシタン禁制の厳しい日本に潜入する。そこで見たものとは・・。潜伏した先に待ち受けていたのは、目の前で次々と拷問され殉教していく日本人信徒、そして自らも穴吊りという恐ろしい拷問を前に背教を迫られる中、ついに対峙するフェレイラ神父とのクライマックスのシーン・・。張り詰めた緊張感が全編に渡りあり、人間とは、日本人とは、神とは、信仰とは、そして「沈黙」とは何を意味するのか。普遍的な永遠の主題が問いかけられる、魂を揺さぶられる文学の金字塔。
先日お客様と本の話しになったり、妻にお勧めの本を聞かれたりしたので、改めて読み返してみた結果、タイムリーに今回はこんな内容でした。